藤田恭兵
私のライフスタイルルール
t'runner 藤田恭兵
先進的な生活を送る越境走者=t'runner(ランナー)の先進性は日々の暮らしの中でいかに恒常化しているのか?を「ライフスタイルルール」としてうかがっていく当シリーズ[MY RULE]。
今回は、不動産流通の新しい形を目指す「さかさま不動産」やアップサイクル事業「上回転研究所」で注目を集める株式会社On-Coの共同創業者・藤田恭兵が登場。
人と人とのつながりから新しい共創関係を生み出す藤田のライフスタイルルールとは?
藤田 恭兵(ふじた・きょうへい)/1992年生、愛知県出身。23歳で空き家を改装しシェアハウスを立ちあげ、半径1.5キロ圏内で8軒の空き家を運営し、名古屋駅付近で村づくりを行う。27歳で地域共創環境づくり、建築リノベーション、企業PR支援を行う株式会社On-Coを設立。28歳でさかさま不動産を立ち上げ、現在全国15拠点で進行中。日本パブリックリレーションズ協会主催のPRアワードグランプリ「グランプリ」、環境省主催のグッドライフアワード「環境大臣賞」、国土交通省主催のまちづくりアワード「特別賞」、日本経済新聞社主催の日経ソーシャルビジネスコンテスト「優秀賞」、イノベーションネットアワード2023「優秀賞」などを受賞。30歳で廃棄石膏ボードを活用した「resecco」を素材アーティストと共同開発。素材開発事業を立ち上げて、新素材の開発、プロダクト制作を行いながら、ワークショップなども開催し、サステナブルなまちづくりも行う。
藤田恭兵のパーソナルインタビュー[MY PERSPECTIVE]はコチラ
t'runner藤田恭兵のライフスタイルルール
- LIFESTYLE RULE.01
- “プライベート”をなくす
- LIFESTYLE RULE.02
- クリエイターと一緒に“遊ぶ”
- LIFESTYLE RULE.03
- 一緒に“表現”する
LIFESTYLE RULE.01
“プライベート”をなくす
僕が日々過ごしているここ「madanasaso」は、自分の会社でもあり、建築周りのモノづくりやアップサイクルのプロダクトをつくる拠点でもあり、イベントスペースでもあり、いろいろな人たちとの交流の場でもあります。この中に最低6人ほど泊まれる所があって、僕は今ここに住んでいるような状態です。個人の専有部分はないので、ご飯を食べる時も休憩する時ももちろん仕事する時もここなので、プライベートがないんですよ(笑)。でもプライベートがないからこそ、ここに遊びに来てくれた人や打合せに来てくれた人とたちとの垣根がなくなって、関係性を深められると思っています。
僕としては別に公園で暮らしてもいいし、公民館で暮らしてもいいし、道端でもいいと思っていて。むしろそっちのほうがたくさんの人と接点ができて、交流が増えて、自分でも思いもよらないようなものがどんどん出てくると思っています。でも実際は道路で寝たり公園に住んだりとかは基本的にはやっちゃダメ(笑)。でも、この「やっちゃダメ」なことに未来のヒントって隠されていると思っているので、ここ「madanasaso」でいわば疑似的にそういう生活をしてみることで、予想を超えることに出合えると思っています。もしかしたらこれが先進的な生活ともいえるかもしれません。
新しい“家族”をつくるきっかけに
あともうひとつは、じつは僕の家族はあまり仲良くなかったんです。僕が、というよりも僕以外の家族同士が仲良くなくて、すごく近くにいるのに僕を介してみんなが会話するような感じでした。だからしばらく僕の中で家族という概念がふわっと抽象化したものだったんです。でも21歳のころ会社を立ち上げた時に、仲間と事務所をシェアしながらお互い雑魚寝で生活していたり、23歳くらいの時には古民家を借りてシェアハウスをしていてそこでも同じように生活していたのですが、そこで過ごした人たちとはもちろん血も繋がっていないし、年齢も価値観も人種も違うんですけど、でもその日々の中に自分は“家族”の片鱗のようなものを感じたんですね。ここにいる人たちとの関係性というのは家族以上のものができているんじゃないかなと。そう考えた時に、このプライベートをなくすという考え方は、新しい家族をつくるきっかけにもなるんじゃないかなと思っています。
LIFESTYLE RULE.02
クリエイターと一緒に“遊ぶ”
「madanasaso」にはいろいろなクリエイターさんや起業家の方などが遊びに来てくれます。
最近よく来ている方の例でいうと、元力士の「ごっちゃんこ」というパフォーマーがいて、彼は小さいころから相撲の道を歩んでいたのですが、腰を痛めて相撲が取れなくなってしまった。でも相撲を生かして何かしていきたいということで、ストリート相撲パフォーマーとして「ストリート土俵」をつくって世界中の人に相撲を体験してもらったり、音楽活動をしていたりします。僕もごっちゃんこと路上で相撲を取ったり、遊んだりしている中で、今はここで一緒にちゃんこ鍋のイベントなどをしています。
活動拠点である名古屋市のランドマーク“テレビ塔”がそびえる久屋大通公園で、ごっちゃんこさん(右)と相撲を取った時の様子(画像:本人提供)
あと“忍者”の子がいて。おふざけではなく、ちゃんと忍者で(笑)。三重大学の人文学部に「国際忍者研究センター」という忍者というものをちゃんと体系的に学ぶ場所があるんです。そこで忍者学を学んだ子が、忍者の精神を引き継いだ「クナイボード」という新しいモビリティをここで一緒につくっているのですが、実証実験をする中で一緒に忍術で遊んだりするんですよね。
「一緒に遊ぶ」というライフスタイルは、もともと僕が好きで一緒にやっているというのが前提にはあるのですが、その結果としてやっぱり心を開いてくれたりするので、それが今やっている活動に繋がっているんじゃないかなと思います。
複雑化していく未来において必要な“珍獣”たち
クリエイターさんとひと口にいっても、外に開いている人もいれば、ニッチな活動をしている人もいます。中でも、キラリと光る良いものを持ってはいても、なかなか社会に適合できなくて、表に出せていなかったり、なかなか自分でもしっくりくるものが見つかってない。でも頑張っていきたいと思っている人が多いと思っています。そういう人たちって社会との接点づくり、例えば一般の方々とワークショップするとか、それこそ遊ぶということが得意じゃなかったりする人も多いです。でも、これからどんどんどんどん課題が複雑化していく未来においては、そういう人材が必要だと思っていて、また、そういったものを変える力がある人たちと仲良くしていくということが、先進的な交流の在り方や暮らし方ではないかなと思っています。語弊を恐れずに言うと、社会不適合で、珍獣・猛獣・魑魅魍魎なクリエイターの人たちと一緒に同じ目線感で「遊ぶ」というのは、簡単に聞こえながらじつは難しいことなんじゃないかな、って自分で言うとすごく偉そうですけど(笑)、この僕のライフスタイルはいつかの未来、先進的な生活につながっていくのではと思っています。
LIFESTYLE RULE.03
一緒に“表現”する
アーティストさんたちと接点をつくって、その人をよりよく知るために一緒に遊んで、体験して、面白いなと思った時にやっぱり感じてしまうのは「もっとこうしたら広がるのに、もっとこういう人と繋がったら社会が発展していくのに」というところですね。ただ“遊ぶ”だけじゃなくて、一緒にワークショップをやるとかイベントをやるとか、“表現”に繋げることは僕のライフスタイルの中で大事にしていますね。
例えば、前出のごっちゃんこが相撲パフォーマーとしてやっていくとなった時に、彼は相撲をベースにしながらラップもやっていきたいという話をしたんですね。でも1人だけではその空間はつくれないし、ラップもみんなでしたい、と。じゃあ僕が空間の演出をしながら、ラップに興味のある人たちも集めながら、コラボイベントを催しました。こうやって社会につないで、次につなげていく、という展開が僕も楽しいし、意味のあることだなと思っています。
こちらの「ルール1」でお話ししたことが「普段の自分のスタンス」で、2つ目が「自分とクリエイターさんの接点」。そしてこの3つ目がビジネスの少し手前・・・と言ってもビジネスになることがゴールとも思っていませんが、もっと広がりを持つとか人からどういう評価を受けるのかという時に、社会と接続するための手段として「表現する」ということをしていますね。
「誰かと表現する」 ことが当たり前の社会に
それが先進的生活につながるかというと正直分からない部分もありますが、そもそも「表現すること」ってみんな好きだと思うんですよね。もちろん見るだけ聞くだけでいいという人もいるかもしれませんが、多分その人も自信がないとか、まだ見つかってないというだけで、きっと人は表現して評価を受けて、アップデートしていく、という行為が好きなのではと思っています。そう考えた時に恐らく多くの人が表現できてないなと思いますし、どこに向けてどんなふうに表現していいか分かっていないと思うんですよね。
僕はたまたまこれまでのつながりとかいろいろな経験の中で、どんな人とどんな中で表現していったらいいのかが分かっていたりするので、気軽にラフでゆるく、かつ社会性も込めて表現していたりします。その中で僕がやっている珍獣・猛獣・魑魅魍魎たちとの表現は、一見面白そうで楽しそうですごそうに見えるんだけども、誰かにとっての「私にもできるんじゃないか」という一つのきっかけとなって、自然と「新しい表現をすること」や「一人ではなく誰かと表現する」というライフスタイルが当たり前になっていくと面白い社会になっていくんじゃないかなと思います。