



“結婚式”の多様性を考えるワークショップ
様々な価値観や意見が存在し、そのどれもが尊重される多様性の時代。LGBTQの方のトイレや制服、結婚しない人たちのための指輪など、新しい枠組みが生まれ、皆が違うことを共有し認識する時代になりました。
しかし現状では、個を尊重し、互いの違いを認め合おうとするが故に、他者との違いが浮き彫りになり、孤独感や差別意識が生まれているのも事実。これからは、敢えて多様性にフォーカスするというより、良い意味で「そんなのどうでもいい」と思える時代が来るはずです。
今回のワークショップでは多様なカップルが経験した、あるいは思い描く理想的な結婚式についてディスカッションし、現在主流の結婚式とは一味違う結婚式のあり方についてのヒントを探ります。
* 開催に当たっては、新型コロナウィルスの感染症対策を実施しています。

ワークショップ概要
パートナーシップを確かめ合い、“ふうふ※”としての関係性をスタートする節目となる結婚式。ライフイベントの一部として一瞬で終わってしまう従来のやり方や、結婚式をするときは一般的に式場探しから行うというブライダル業界の仕組みとその課題に触れながら、パートナーとの関係性のアップデートとその記録(アーカイブ)をテーマにディスカッションを行いました。
※ふうふとは、男女のカップルに限定しない婚姻関係にある二人のことを、ここでは意味します。
- 1. 参加者が実践した結婚式(儀式)とは?
- 2. 理想の結婚式(儀式)とは?
- 3. 結婚した(する)二人の「記録(アーカイブ)」とサービスアイディア
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ワークショップの詳細レポート
1. 参加者が実践した結婚式(儀式)とは?
ワークショップには、外部参加者 11名、t'runner 2名、KDDI総合研究所研究員 2名、ワークショップ運営者 3名の合計 18名が参加しました。事前に回答いただいたアンケート結果を参照しながら、自己紹介と自分達が行った結婚式(儀式)や考え方について共有しました。
参加者のバックグラウンド
・20~50代の既婚者(事実婚含む)・未婚者・セクシャルマイノリティの方
結婚式(儀式)の有無
結婚式(儀式)を行った方:結婚式(儀式)を行った理由と実施して良かったこと
・両親やお世話になった人に感謝を伝えることを目的に、今後の家族圏(拡張家族※)のきっかけづくりとして実施した。
・妻と夫の双方共に結婚式を行いたいという意志があったので行った。
・かつての友人や家族が集まれることができてよかった。
・良い節目になった。
・これまでお世話になった夫婦の関係者が一堂に会することができる良い体験になった。
・思い出に残る一日となり、参列者、双方の家族とパートナーとの仲が深まった。
※拡張家族とは、血縁ではなく意識でつながる「家族」のこと。
結婚式(儀式)を行わなかった/行う予定はない方:その理由について
・するつもりで進めていたが、途中で自分たちの思うような結婚式ができないと判断した為、やめてしまった。
・儀式的なものへの苦手意識があるので行いたくない。
・儀式をやろうがやるまいがその人への愛は変わらないので行わない。
・相手がやりたい場合は儀式を行うかもしれない。
・将来について話し合う段階で話題として出てお互いの意見の一致で決まった。
・儀式にかかるはずだったお金を別のことに使って思い出を作ることができてよかった。
・パートナーシップ宣誓をしたタイミングで、それぞれの気持ちを話し合い決めた。
・儀式が必要なものなのか、現段階では分からないので行わなかった。
・儀式がなかったとしても、互いに尊重し愛し合える関係性があるので行わなかった。
・それぞれの今の気持ちを話し合って決めた。
・お互いの感覚や、当時の優先順位で決めた。
結婚式(儀式)を行うタイミングでやっておきたかったこと/やってみたいこと
・式の内容に納得できるように、全てを自分たちで作ること。
・外注しながらコンセプトから当日の装飾、デザインまで監修。
・式場決定までにもっと費用や条件など詳細に検討したい。
・これからも、一緒に写真を撮って思い出を残していきたい。
・音楽ライブみたいな結婚式。
今後もパートナーとの関係性を良好にしていく上で、必要だと考えること
・改めていつか家族を祝うタイミングを作りたい。
・双方のバックグラウンドを知ること。
・定期的に真面目な話をする機会、お互いの仕事や生活の状況に合わせて、家事や家庭の方針をアップデートしていくこと。
・何かあったらとことん話し合うこと。
・自分たちだけに閉じず頼れる人を増やしていくこと。
・対話すること。
・もやもやを無かったことにしないで、話し合いをする。
・成長。思考の成熟。
・相手の交友関係に必要以上は関わらない。
・家族とはいえ他人だということを常に頭に入れて、相手の人生・生活にあまり踏み込まない。
2. これからの理想の結婚式(儀式)とは?
本ワークショップの参加者は共通して、いわゆる従来の「結婚式(儀式)」そのものに重きを置いているのではなく、パートナーや周囲の方と信頼関係を築くための手段の一つとして、結婚式(儀式)を捉えていることがわかりました。
そして、キーワードは「記録(アーカイブ)」。信頼関係のあるパートナーシップや、平和で幸せな日常を記録として残したいニーズは、現在の結婚式が興った当初から普遍的にあります。実際に、結婚式(儀式)だけでなく人生の節目のアーカイブとして、写真や動画を残す人も多いと思います。
ここからはパートナーとの関係性を続ける過程で作られる“ふたり※”の「記録(アーカイブ)」を捉え直すことで、理想の結婚式(儀式)を考えます。
※ふたりとは、夫婦関係によらないあらゆるカップルのこと
<ディスカッションの内容>
結婚式(儀式)は、もっとこうしたい!
・自分たちの好きな人を自由に呼びたい。
・せっかく集まってくれたのだから、参列者との時間を大切にしたい。
・ご祝儀など、ビジネス感を無くしたい。
・結婚式にかかる費用の内訳が不明瞭なので、透明化してほしい。
・従来の結婚式は夫婦と両家だけに紐づく親族間のみの儀式に偏っている。
パートナーシップを深めるために実践していること
・結婚記念日に3行の交換日記をしている。
・家族圏(拡張家族)向けのフリーマガジンの作成と発行。
・YouTube撮影を行って、対話のきっかけにしている。
・スタンスの違う2人が一緒にいられるように、喧嘩を記録。
・毎月焼肉に行ってパートナーシップの関係を更新している。
・誕生日にパートナーと親しい人にメッセージを集めてプレゼント。
関係性の呼び方やカテゴライズについて
・そもそも2人の関係性を表す言葉がなかったので、自分たちで新しく名称を付けた。
・パートナーシップ宣言をした。
結婚式のあり方について
・ITやテクノロジーの発展と共に、メタバース空間での結婚式もあり得るのではないか。
・結婚式がリアルではなくオンラインになったとき、新しい記録の方法として上手にデザインできれば、新たなニーズが生まれるかもしれない。
・どうせお金を使うなら海外旅行に行きたい。
・音楽活動を行っているのでお客さんを呼んで音楽ライブ形式で結婚式を行いたい。
・自分たちを起点に関係者たちの人生を祝う場にしたい。
3. 結婚した(する)二人の「記録(アーカイブ)」とサービスアイディア
パートナーシップを深めるために参加者が実践している記録(アーカイブ)をヒントに、サービスアイディアを議論したところ以下のようなアイディアが出ました。
・パートナーシップをまとめたフリーマガジンの作成と発行。
・メタバース空間上に二人の歩みをまとめた美術館と、それらを家族や友人が行き来できるような “どうぶつの森”のような場所。
・リアルで行った結婚式(儀式)そのものをメタバース空間に記録(アーカイブ)。
さらに具体的なサービスに対するニーズは、以下の通りです。
・アーカイブは、オープンかクローズドかを選びたい。
・媒体は、紙だけでなく動画や音声など、多様な選択肢が欲しい。
・簡単に作れるようにフォーマットが欲しい。
・AIが自動編集してくれると嬉しい。

今後のプロジェクトの展望
「結婚式(儀式)」を切り口に、ニューノーマルなパートナーシップのあり方を模索したProject Wのワークショップ。その先の人生を共に歩むと決めた相手との結婚式(儀式)を行った後、良好なパートナーシップを更新していく手段のひとつとして挙がったキーワードは、「記録(アーカイブ)」でした。
今回のワークショップで得た気付きをヒントに、あらゆる“ふたり”を応援するサービスづくりを目指します。
ワークショップ参加メンバー
杉原 賢 / Project W プロジェクトリーダー SWITCH DE SWITCH 代表
“見えないを価値にする”をコンセプトに活動するデザインレーベルSWITCH DE SWITCH代表兼ジュエリーデザイナー。受賞歴にグッドデザイン賞、JJA Jewelry Design AWARD等。
加藤 翼 / 株式会社qutori CEO、株式会社ロフトワークコミュニティデザイナー
株式会社qutori CEO。「共創」をテーマに他分野のコミュニティを横断する事業を多数手がけ、100BANCH、SHIBUYA QWSのコミュニティマネージャーを務める。
小林 亜令 / KDDI総合研究所 執行役員
KDDI総合研究所執行役員 共創部門長。KDDI research atelierにおけるライフスタイルリサーチの統括を担当。FUTURE GATEWAYにおいて、t'runnerの皆様と共に、ライフスタイル変化の兆しを捉え、パートナーの皆様と共に、先進的なライフスタイルを一般化することで、社会課題解消に貢献することがミッション。
水口 恵美子 / KDDI総合研究所 コアリサーチャー
KDDI総合研究所コアリサーチャー。博士(ヒューマン・ケア科学)。医療系のバックグラウンドを生かし、主に医療・ヘルスケア・ライフサイエンス系の調査・研究に従事する。
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