



未来の美容室をテーマとしたワークショップ
定期的な健康チェックを気軽に、かつ、おしゃれに行える。そんなライフスタイルが広まれば、特に若い世代の人たちの健康への意識も高まり、予防医療にもつながるのではないかと我々は考えています。そんな健康チェックが定期的に行える場所として着目しているのが「美容室」。美容室は、デジタル・テクノロジーによってアップデートできる余地があり、我々が想定している健康チェックに留まらず、未来の美容室はどのように発展していくか/発展させていきたいか、を美容師の皆さんと議論するワークショップを開催しました。IT技術による美容室の進化の話題や、体の内側からもキレイにする美容室でのヘルスケア機能の話題など、幅広く議論しました。
様々なものが非接触に変わりつつある今、必ず FACE to FACE でなくては成り立たないのが美容室。ヘアサロン内がアート作品で飾られ、ギャラリーのような東京・表参道最大級の人気へアサロン、NORA(ノラ)に集い、美容師のみなさん、t’runner、KDDI総合研究所の研究員が、未来の美容室について話し合いました。
※ 開催に当たっては、新型コロナウィルスの感染症対策を実施しています。
ワークショップ概要
髪を切る以外の理由で訪れたくなるような、コミュニティ機能のある美容室にニーズがありました。
2. 美容室×IT技術
「お客さまのカルテの電子化」や「新人教育」などに対し、積極的なアイデアが出ました。
3. 未来の美容室
「コミュニティの場」「ヘルスケアの場」などの付加価値が望まれています。
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ワークショップの詳細レポート
企画の趣旨
数あるライフスタイルの中でも、美容は人間の根源的な欲求に紐づくものであり、普遍的なテーマであると同時に、デジタル・テクノロジーを組み合わせることでお客さまのライフスタイルのアップデートが可能な領域であると考えています。例えば、美容は体の外側のケアだけでなく体の内側のケアも密接に関連しており、美容室は定期的に通うだけで体の内側からもキレイになる場となる可能性を秘めていると考えています。
また、今の美容室は、美容師とお客さまの会話だけで成り立っており、コミュニティ空間としての設計はされていません。しかし、行きつけの美容室は、仕事や居住地に近いという人も多くいます。それならば、似た趣向や感性の持ち主と巡り合う恰好の場になるポテンシャルは十分あるのではないでしょうか。
本ワークショップでは、未来の美容室をテーマに、最新のIT技術を踏まえながら、美容室が新たに備えるべき機能と、それらを活用した新たなライフスタイルを提案することを目指します。
ディスカッション1: 「通いたい美容室は?」

AとBの2グループに分かれて「通いたい美容室は?」をテーマにアイデアを出し合い、その後、全体で共有しました。
AグループとBグループで、それぞれ次のような意見が出ました。
・マッチングスペース
・パーソナル診断
・コーチング【Bグループ】
・コーチング
・半日いられるホテルのような美容室
・カルテの共有
・体力超回復装置のある美容室
全体でディスカッションをしたところ、コミュニティの機能を求める声が共通して挙がりました。イメージとしては、BARのような、人と人がつながる場所。
実際に海外の美容室では、待ち時間の間もお店と連帯感をもてるよう、創意工夫がされています。しかし、日本では法律上、美容室が他事業をするのが難しい状況にあります。美容室は実際に足を運ぶ場所だからこそ、コミュニケーションと+αの付加価値を創造することができる余白があるのではないでしょうか。
NORAでは、定期的にアートイベントやフリーマーケットを実施するなど、髪を切る以外の理由で美容室を訪問していただくことが理想形だと考えています。t’runnerからも、ただ髪を切るだけでなく、お客さま同士の繋がりを支援してくれるとありがたいし、そういったイベントがあればぜひ参加したいという意見が挙がりました。
ディスカッション2:美容室×IT技術

10年前から美容室のコアな部分は変わっておらず、デジタル化が進んでいないように見受けられます。一体なぜでしょうか。どの業務であれば、IT技術によって効率化できるでしょうか。将来、どんな技術や仕組みがあるとワクワクするでしょうか。
AとBの2グループに分かれアイデアを出し、その後、全体で共有しました。
・アナログな作業が多いので忙しい。
・あえてデジタル化せずに、人の手で行うからこその付加価値をお客さまに提供する。【どこをデジタル化できるのか?】
・美容師の育成分野
・お客さまカルテ
【未来のアイデア】
・デジタルグローブ&VRゴーグル
・面貸しサロン*の一般化
・免許制度の緩和
※ サロン内の空きスペースや営業時間外を活用して、フリーランスの美容師に場所を貸し出しているサロン。
仮説として、美容室をもっとデジタル化できるのではないか?と考えていましたが、NORAのように高品質なサロンで、お客さまに最大の体験価値を提供したいと思っている美容室の場合、単純に「自動化します」「時短になります」では響かず、人がやるからこそ、お客さまに価値と感じてもらえる瞬間が多いそうです。
ただ、美容師は職人だからこそ、技術を習得するまでに時間がかかります。IT技術を活用することで、新人美容師が一人前になるまでの期間を短縮できるのは、とても良いという意見が多く挙がりました。
またお客さまのカルテなど、未だにアナログで電子化されていない要素が美容室には多く、どの業務を人力で行い、どの業務をIT技術で行うのかは、議論の余地がありそうです。
ディスカッション3:未来の美容室
髪の毛は、目に見えて悪い状態と良い状態がわかります。これからの時代は、予防医学=セルフメンテナンスが大事。そんな内側のメンテナンスに気づけるようなきっかけになる美容室があったらどうでしょうか。
この問いをきっかけに、美容室での話題は何なのか?について話が膨らみました。
中年層は、尿酸値や肝臓の数値など、健康の話題が中心になることが多く、年齢層が若い場合はファッションや美容につながる肌の状態やメイク用品の話が多いことがわかりました。しかし若い世代でも、以前はアフターケアの話が中心でしたが、最近はこれから生えてくる髪のためのケアが中心になっているようです。
これらから、美容室にくるお客さまの関心ごととして「ヘルスケア」があることもわかりました。



今後のプロジェクトの展望
今回のワークショップを通じて、未来の美容室には「コミュニティの場」「ヘルスケアの場」など、髪を切る以外の付加価値が求められていることがわかりました。誰もが定期的に通うという稀有な場の代表でもある美容室は、出会いやヘルスケアを通じて、心身共にリフレッシュする場として進化するポテンシャルを持っており、お客さまに新しいライフスタイルを提案できる可能性が十分にあることを確認しました。
今の美容室はアナログ部分が多く、IT技術を導入できる可能性があります。美容業界は大手事業者よりも、優れた技術とセンスを持つ「中小事業者」が強い世界です。そういった意味でも、業界全体が大きく変わるチャンスがあります。
美容室にIT技術を掛け合わせたら、どのような未来が待っているのでしょうか。本プロジェクトの行く末にご期待ください!
ワークショップ参加メンバー
・市橋 正太郎 / Address Hopper Inc.代表
2019年にAddress Hopper Inc.を創業。移動型ライフスタイル「アドレスホッピング」を提唱し、約4年間自らも実践。結婚をきっかけに「消費型無拠点生活」から「循環型多拠点生活」への移行を模索中。
・市橋加奈美 / 循環を考える料理家
夫婦でアドレスホッピングしながら各地の生産者を訪ねるフィールドワークの実施など、料理家と移動生活の両立を実現。
・澤村 俊剛 / 株式会社METRIKA,Inc. 取締役 COO
誰もがデータを使いこなせる社会作りを目指し、2021年に株式会社METRIKAを創業。
・溝端 友輔 / 株式会社NOD CEO
2019年に株式会社NODを創業。遊休不動産のマッチングプラットフォーム「RELABEL」や日本橋のOMO型商業施設「GROWND」などを手がける。
・鎌田 祐大 / 美容師
プライベートサロンを経営する傍ら、東京・新橋でもコワーキングスペースを利用してサロンをオープン。フリーランスで撮影のメイクや、ヘアも行う。
・武 海夢 / パラレルワーカー
米国の大学に留学後、現地のPR会社に就職。1年後には日本に転職し、製造業や国際コンサルなどの経験を経て、マーケットリサーチ会社に入社。傍ら、U-29でインタビュアーや心理学関連の活動も行う。
・NORA HAIR SALON スタッフ5名
・服部 元
KDDI総合研究所 リサーチアトリエ/ライフスタイル・プロジェクト2Gのグループリーダー。コミュニケーションに関する専門知識や技術を背景に、未来のライフスタイルを創造中。
・KDDI総合研究所研究員:池田 和史・楊 博・高井 公一
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