真の健康、美、エネルギーを通じて人生をより豊かに謳歌するお手伝い 鎌田祐大
ヘアサロン 5 1/4 (ファイブアンドクォーター)代表、デトックス、料理人、整体、エネルギーワーク、企業内サロン、バーテンダー 鎌田祐大
KDDI research atelierが2021年に始動した「FUTURE GATEWAY」。ここは、これまで培ってきた技術を活用しながら、新たなライフスタイルを実践する人々を中心に、多様なパートナーとこれからのスタンダードをつくる共創イニシアチブです。当シリーズではFUTURE GATEWAY に集う先進生活者「t'runner(ランナー)」の方々に自身の価値観や目指す未来を伺います。
今回登場するのは、鎌田祐大さん。ヘアサロン 5 1/4 (ファイブアンドクォーター)を経営し、キッチンカーや「企業内サロン」、さらにソーシャルバーテンダー*1、整体など、複数の仕事を持ってパラレルワーカーとして活動されています。鎌田さんに仕事への想いや今後の展望を語ってもらいました。
*1:いろいろな人たちが日替わり店長としてカウンターに立ちコミュニティを形成するバーを「ソーシャルバー」と呼び、そこに立つ人のことを「ソーシャルバーテンダー」と言う。
美容師であり料理人であり整体も行うパラレルワーカー
- FG:
まずどのような活動をされているか教えていただけますか。
- 鎌田:
僕は美容師であり、料理人であり、また整体を行ったり、バーテンダーをやったりするパラレルワーカーです。まず美容師としては、美容室の経営に加えて、企業のワーキングスペースで働く人たちの髪をきれいにする「企業内サロン」を開いています。
次に、料理人としては、キッチンカーやケータリングの活動をメインとしていますが、コロナ禍でイベントが無くなってしまい最近は少なくなっています。そして整体に関しては、人間の思考の癖が身体に影響することに着眼し、肉体的に整えるアプローチに加えて思考の癖を直すアプローチなどをしています。そしてこれら全ての活動で、毒出し(生活環境や食習慣などによって体の中に溜まった不要な有害物質や老廃物を排出させること)を行っています。外側からも内側からも毒出しのアプローチをすることで、心身ともにきれいになってもらいます。毒出しを行うと臓器の調子が良くなり、臓器内に生息している微生物の状態が良くなれば、気分や思考も整うと考えています。
鎌田 祐大(かまた・ゆうだい)/1989年生まれ。高校在学中より美容師を志し専門学校卒業後、都内の美容室勤務を経て渡米。約3年間、ニューヨークのサロンでスタイリストとして経験を積み、帰国後は都内のインターナショナルサロンに勤務。 2016年、27歳の時に前オーナーより店舗と設備を譲り受ける形で「5 1/4」を開業。現在はサロン経営の傍ら撮影のヘアメイク、外資系企業のオフィス内にあるリラクゼーションスペースでヘアケアやカットを行うなど、フリーランスの美容師としても活動中。 「活動の柱を多くもつことで生きやすくする」を自ら体現するために、料理や整体などを中心にパラレルワーカーとしても活動中。
人に興味を持ってもらうには
- FG:
このような活動に至ったきっかけについて教えていただけますか。
- 鎌田:
高校卒業後、美容師の専門学校に通い、専門学校卒業後から美容室に勤め始めました。今の活動に至ったのは、自分の店を持ち始めてからです。多くの美容室がすでに存在する中で戦っていかなければいけないのですが、自分より20年上の先輩たちもいるし、地域の特性や違いもあります。どう差別化したらよいのかを考えたところ、唯一無二の分かりやすい存在になれば良いのではと考えました。技術的な価値を高めることはある程度までは大事ですが、それ以上は美容の領域だけでは難しいと思いました。僕が思い付く程度のことは誰かがすでにやっているし、もっとすごいことをやっているところもあります。また店舗の数を増やしたいというような気持ちはありませんでした。どう価値を高めればいいのか考えたところ、人が僕に興味を持てば人は僕の話を聞いてくれて、それは価値を高めることに繋がるのではと気付きました。
当時、人生の先輩から、「人は優れているものよりも異なっているものの方に興味を覚える」という話を聞きました。普遍的なものやみんなが知っているものよりも、異なっているもの、人がやらないことをやっている人や、長くやっている人などに興味を覚えるらしいと。例えば10年間サラリーマンをしている方と10年間ニートの方とでは、どちらに興味を持つかとなった場合、「興味を覚える」だけであれば長く異端なことをやっている後者になるのではと思いました。そうすると美容師をやる(続けていく)ためには他の美容師がやらないことをやれば光るのではないかと。もちろん技術を磨きつつですが、先輩でも手を出さないことをとりあえずやってみようと思い立ちました。
- FG:
料理人や整体の分野で活動するようになったきっかけを教えてください。
- 鎌田:
そのころ、農水省職員であった僕の幼なじみが、コメの消費拡大に取り組んでいたのですが、その同じ時期に別の友人がキッチンカービジネスをやっていて、「それじゃあ、キッチンカーでコメ消費を促進する発信をしよう」ということになりました。一般的な「美容師」というイメージからは遠い活動ですし、面白くてかつ社会貢献ができるということで始めました。そこから発展してケータリングをやったりフェスや大きなイベントに出店したりしました。
整体や毒出しもその延長線上です。髪の毛を切る時には頭を触るのですが、僕は頭の骨格をまず見ます。球体の頭の骨格に髪の毛が生えていて、その骨格はみんなちょっと違っていて凹凸があります。実はその人に似合うように髪の毛を切るより、頭の骨格を黄金比に近づくよう補正した方がきれいになると言われています。簡単に言えば、頭の形、目などの位置を美しいと言われるダビデ像の黄金比に近づけることができれば、みんなきれいになるんです。そういう観点から頭蓋骨補正について学びました。補正によって完璧に黄金比になるわけではないですが、時間をかけて補正すれば顔が小さくなるし、目などの顔のパーツも動かすことができると思います。そして目の周辺の骨格を補正すると、例えば鼻の調子も良くなります。
このように、学ぶ対象が頭から首、首から肩に広がって、全身に至りました。肉體(にくたい)について学びながら、美容業に身を置きキッチンカー料理人も務め、さらにぎっくり腰の相談を受けたりもしていました。キッチンカーのお客様からは「普段どこにお店を出してるんですか?」とか「他に拠点があるんですか?」などと聞かれることがあり、「普段は美容師です」とか「整体もやるんです」と答えると、お客様は「何者なのか?」と疑問を持ち始めます。お客様の疑問符「?」はすなわち「興味」になるので、これでいいと思いました。
自分の「希少価値」「レア度」を上げる
- 鎌田:
複数の業界に携わり、いずれも店を出せるレベルに達して専門スキルを相互に活かせば、従事している業界の足し算ではなく掛け算で自身の「希少価値」を高めていくことができます。そして、それぞれの業種で店を出せるかどうかがパラレルワーカーとして生計を立てられるかどうかの分岐点になります。仮に美容師のトップが100万人に1人だとします。料理業界や美容業界で店を出せるレベルが100人に1人(1%)とした場合、料理業界と美容業界のどちらにも店を出せるレベルに達することで1万人に1人(=1%×1%)の存在になれたら希少価値が上がりますよね。さらに整体など業種を増やせば、例えば100万人に1人(=1%×1%×1%)になれる可能性が出てくる。すなわち、美容師のトップと同じ希少価値のある人になれます。
僕はひとつのことを突き詰めるよりも複数の柱の方がつくりやすい。生計を立てる柱を3つ持ち、例えば今日は子どもといる時間が多かった、今日はインタビュー、というような形で、人生の時間のパーセンテージをそれぞれの柱に割り振って、さらに相乗効果を生み出す。今では、この形でちゃんと生活できているし、人から興味を持っていただけて、こうしたインタビューを受けるようにもなりました。この形の生活は誰でもできると思います。柱を無理やりつくろうとすると僕はしんどくなります。正しいか正しくないか、失敗するかしないか、儲けられるか儲けられないかといったことは考えずに、ワクワクするかしないか、楽しいか楽しくないかで意思決定をしました。そうしたら結果的にパラレルワーカーになっていたという感じです。
最初は趣味でいいんですよ。趣味でやっていたらいつの間にかあるレベルを超えていた、これが1番理想的な形かもしれないですし、実際そう思います。楽しくないことをやりたくはないですしね(笑)。
- FG:
「希少価値」を上げる考えに至った想いを教えていただけますか?
- 鎌田:
もともとみんな違っているので、その違いを見出して、磨けばいいなと思っています。それこそ、「幸せですか?」と聞かれたらみんなが「幸せです」と答えられる世の中だといいなと思います。そう思うのは、みんな違っていて良いという思想があったからなんです。当初は店も持とうとは思っていなかったんです。美容室は数が多くて、運営にはお金がかかる。集客できるかどうかの問題もあるし、リスクが大きすぎる。そのため、美容室はたくさんあるのだから美容室を転々とするような働き方ができればいいと考えていました。でも、数年前に先輩から「店を辞めるから代わりにやらないか」と誘いがあり、その誘いを受けて店を始めました。もしも店が立ちいかなくなったら雇われの立場に戻ればいいだけなのでリスクも大きくないし、店を持ったことがある人の方がレア度は上がると考えました。そして、さらにどうしたら面白いかなぁと考えて美容師をやるために美容師がやらないことをやろうという思いに至りました。そうやっていろいろなことにトライしたことが続いて拡がっています。ワクワクする気持ちが先ですね。
大事なのはワクワクできるかどうか
- FG:
ご自身の活動で1番大事にしていることを教えてください。
- 鎌田:
活動で大事にしていることは、ワクワクできるか、できないかです。僕は髪を切ったりきれいにしたりすることを、その人のモチベーションを上げることだと思っています。髪を切ったら嬉しい気持ちになったり、すっきりしたりするじゃないですか。モチベーションが上がっていない時ってパフォーマンスも下がるはずで、逆にモチベーションが上がっている時はパフォーマンスも上がるはずです。そう考えると、美容師がスキルを上げればお客様のパフォーマンスを上げられる可能性があると言えます。そして、僕たちが何か活動や仕事をする場合もモチベーションが上がる好きなものを選んだ方が良いと思います。例えば僕は1日中ヘアカットの動画を飽きずに見続けることができるし、料理や整体の動画も見ていられます。でも、プログラミングの動画はずっと見続けると飽きると思います。自分が興味のあることはモチベーションに直結していて、それを選べるかどうか、行動した時に楽しいか楽しくないか。お金を稼げるものであっても直感的に嫌だと感じたらやりません。かつて直感的に嫌だと感じたものを選んでしまったことがありますが、自分の中でひずみが起きて結果的にパフォーマンスが上がりませんでした。
- FG:
3つの柱である美容、整体、料理以外の活動があれば教えてください。
- 鎌田:
今はあまりないのですが、毎日店長が替わるバーがあってそこでバーテンダーをやったりしました。他には趣味でヒューマンビートボックス*2をやったりします。
*2:楽器を使わずに人間の発話器官を使って音楽を創りだす音楽表現
- FG:
ご自身の活動が社会にどう影響していると思いますか?
- 鎌田:
どの程度社会的なのか分からないですが、僕に憧れを持って一緒に働きたいと言ってくれた後輩がいます。その後輩は友人から「悩みの相談を受けてくれたり身体の調子を整えてくれる美容師がいる」と聞いて、お客様として来てくれました。その後、その後輩の悩みを聞いているうちに「祐大さんみたいに働きたい」と言ってくれて一緒に働くことになりました。また、お客様でヨガの先生をやっている方に美容室のスペースを貸し出したり、セミナーを開くお客様に美容室のスペースを使ってもらったりしています。
また、美容室で隣のカジュアルフレンチレストランからケータリングを提供できるようにしていて、お客様がビールを飲みながら施術するということもやっています。レストランの売り上げにもなるし、お客様にメニューを見ていただくだけでもレストランの宣伝になるので、良い循環がつくれていると思っています。このように、コミュニティの中で美容室を活用できているので、社会にというより、次の世代や自分が直接関わっている人たちには良い影響をもたらす存在になっていたらいいなと思っています。
「日本人であること」を共有できる場所づくりを目指して
- FG:
今後、取り組んでいきたいことについて教えてください。
- 鎌田:
いろいろなことに興味があります。いつも世界が、地球が良くなっていけばいいなという想いがあって、そのための行動として最近日本のことを学び始めました。自分たちがどこの“民”なのかを知る。例えば欧米人は、自分たちはこうだとはっきり表現する方が多い傾向がありますが、日本人ははっきり言わないで引いてしまう傾向があります。それは日本人が自分たちを知らないだけのような気がしているので、「僕たちはこれを持っている」、「アニメと忍者だけではない」、というのを日本人としてちゃんと知って伝えることができるようにしたいと思っています。
僕ができることは、整体などの知識を使ってマインドセット*3や昔の人の身体の使い方を伝えることです。昔の人の生活様式を知ることによって昔のその時の精神性を知ることができるはずです。この精神性だからこの身体の使い方、この身体の使い方だからこの精神性というような関係があると思っていて。どっちが先でもいいんです。今、僕たちは昔の人の心身の状態を忘れてしまっているだけで、僕たちの脳や遺伝子には、昔の記憶が残っているのではないかと思っています。こうした昔の日本人の身体の動かし方や考え方を学ぶことによって、地球上どこにいても「日本人に戻れるゆるぎない場所」を自分自身の中につくれると思っています。その場所のようなものをたくさんの人と共有できるように取り組んでいきたいですし、またメソッドを確立して伝えていきます。*3:人が持つ「無意識の思考・行動パターン」「固定観念や思い込み」「物事を捉えるときの思考の癖」を意味する
昨今、外国人の方が日本のことをより詳しく知っていることがあります。日本人の方が日本のことを知らない、でもそうならざるを得ない歴史もあった。日本人をより理解するために、「古神道」*4などの日本人のはるか昔の呼吸の仕方、姿勢の取り方をやってみようと思いました。やってみると身体の調子が良くなったんです。みんながこういう昔の日本人の呼吸や姿勢を体現、体感できたらいいなと思います。そして、その精神性と肉體(にくたい)を取り戻し、みんなに「幸せですか」と聞いた時に、みんなが「幸せだね」と言える社会になって、そういう社会の状態が続けばいいなと思っており、そこに向けて私ができること、各々ができることを精進していきます。
*4:日本において外来宗教の影響を受ける以前にすでに存在していたとされる宗教
- FG:
最後に今後のFUTURE GATEWAYでの活動も含めて、実現したい未来についてお聞かせください。
- 鎌田:
FUTURE GATEWAYの発信力や影響力はあると思います。僕が今お話した世界をつくるためには、僕1人だと難しくて、例えばワークショップでもいいですし、少しでも興味を持ってもらえたら1人でも2人でも何人でもいいので、実践してもらいたいです。知識だけ持っているのと実践して知識が増えるのとは圧倒的に差があります。例えば「この呼吸の仕方はこうした方がいいですよ」と言っても、実際やってもらわないと意味がないんです。毒出しも同じで、実際やってもらわないと毒素は出ないんです。また実践する場合も意識してやらないとだめで、「出せるんだー」と思ってやるのと、「なんだか面倒くさいな」と思ってやるのとでは効果がまったく違います。そういう、たくさんの人との実践の場としてFUTURE GATEWAYを活用していけたらいいなと思います。