第3回MEET UP EVENTS「新しいはたらき方×Learning Community」をレポート!
パーソルキャリアのプロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」とKDDI総合研究所/KDDI research atelierが推進する共創イニシアチブ「FUTURE GATEWAY」が、「新しいはたらき方×これからのライフスタイル」をテーマにした「MEET UP EVENTS」を共催。3月23日にはシリーズ最後となる第3回のイベントが開催されました。
今回は、コミュニケーションストラテジストの大塚美幸さんと、社会課題解決に向けた組織活性化プロフェッショナルの田中浩敬さんが登壇。
『「新しいはたらき方」×「Learning Community」~ポートフォリオワーカー黎明期におけるこれからの学び~』と題して、パネルディスカッションや交流会が展開されました。
「学力」ではなく「学習力」を伸ばす
オープニングでは、パーソルキャリア・タレントシェアリング事業部の吉原貴子さんが、このイベントの主旨を説明。そしてKDDI総合研究所・FUTURE GATEWAY事務局より先進的な生活者を中心に未来のライフスタイルの一般化を目指す「FUTURE GATEWAY」の取り組みが紹介されました。また、今回は「FUTURE GATEWAY」に参画するコミュニティメンバーの「t'runner(ランナー)」であり、ポートフォリオワーカーの丸山 咲より、自身の取り組みや学びに関する新たな挑戦についても紹介がありました。
大学にてコミュニティ政策を専攻後、(株)リクルートキャリア(現:(株)リクルート)に入社した彼女。しかし、「当時、上場前夜だったこともあり、ものすごく働いていました」といいます。「こんなはたらき方でいいのだろうか?」という思いとともに、会社勤務と並行して慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科にてウェルビーイング(Wellーbeing)の研究を始めます。
その後、「4000人規模の会社から、7人の“ド”ベンチャーに転職します」と、スタートアップの経験も経て、独立。企業向けの人事/PR事業を運営する傍ら、徳島県神山町で「神山まるごと高専」の設立プロジェクトに出合い、ブランディング・SNSマーケティングなど複数の活動に参画。そして、「自分で何かを起こすよりも社会に貢献できることもあるかも」と思い、学校職員としてジョインすることに。さまざまな肩書を持つポートフォリオワーカーとしての道を邁進します。
「(学校の)コンセプトは『テクノロジー×デザインで人間の未来を変える学校』。育てる学生像は『モノを作る力でコトを動かす人』。4割くらいの生徒が起業家になるといいな、と思っています」と、学校の創立に出精したのち、4月の開校とともに徳島県に移住します。
「一貫して示したいのは『学力だけじゃない』ということ。学力を伸ばすだけではなく、いろいろなツールやシステムを使いこなすような『学習力』を伸ばす手伝いをしていきたい。大人である私たちが、学校をつくり、子どもと接する中で『どういうことをしたいの? なにがしたいの?』と、いつでも問えるような環境づくりができるといいなと思います」。
過疎化が進む神山町が「日本のシリコンバレー」と呼ばれるような日もそう遠くないかもしれません。その礎として、彼女のようなポートフォリオワーカーならではの複眼的な視点が、これからの若者たちには不可欠になってくることを予期させました。
「神山まるごと高専の取り組みによって、どんな家庭環境の子どもでも学び直しや未来のチャレンジができるようになれば」と展望を語る丸山咲
100求められたものは絶対100以上で返す
「神山まるごと高専さんと同じく、4月に開校した『ビューティー&ウェルネス専門職大学』の准教授として就任します。日本で初めて『健康と美』を教える大学で、私はビジネスコミュニケーションについて講義をしています」。
大塚さんは、テレビ局のアナウンサーとしてキャリアをスタート。その後、フリーに転向しつつ、自身のキャリアと子育てを両立させることを目指し、人材育成会社を起業。また、国内外で1,200店舗以上の飲食店を運営している会社の社外役員としても従事。そして前出の大学以外にも、大妻女子大学などで、アントレプレナーシップやビジネスコミュニケーションを教えているという大塚さんのワークスタイル。
さらに、「大学院の研究室にも身を置き、サステナビリティや人的資本、特に教育における人の変化や経済価値の変化についての研究もしています」と、学びを得ながら、場所や時間に縛られない新しいワークスタイル・ライフスタイルを実践中。
現在は、人的資本の向上を目指す企業の経営層、管理職(特に女性管理職育成)への研修やワークショップを行う会社の経営を軸にさまざまな活動をしている大塚さん。
ワークスタイルにおいては「与えられた仕事は100%返していく」というスタイルがベースにあるそう。
「100求められたものは絶対100、いや100以上で返していく、ということをいつも考えています。そして100以上ができたらさらに次のストレッチゾーンに自分を置いて、アウトプットの幅を広げていきます」。
アウトプットやインプットについても独自の方法を披露する大塚さん。
「インプットし続けても自己成長しないので、アウトプットありきでインプットするのが大前提だと思っています。新しいことをするときやまったく知らない新しい分野をどうやって自分の中に腹落ちさせていくかというと、まず図書館に行きます。例えば『ポートフォリオワーカー』ってなんだろう?と思ったら、ポートフォリオワーカーについての本が置いてある棚を一通り見ます。読み方はこうです。まえがき→あとがき→もくじ。そして真ん中くらいの大事そうなところを拾って読んでいく。これを30冊くらいやると、だいだいその分野のサマリがわかるようになってきます」。
「なにかが気になった時にとっさに誰かに声をかける、発信する。その一歩の行動を取るか取らないかで、人が集まってくるかどうかが決まる」と大塚さん
「出会い×好奇心×心の赴くまま」
さまざまな肩書を持つポートフォリオワーカーとしても、自らそうなろうと思って行動したわけではないという大塚さん。
「いろいろなことをしていくうちに、『あなたのはたらき方って○○だよね』とか『それって○○って呼ぶんだよ』とか、逆に周りの皆さんが教えてくれたり。流れに身を任せていたらそうなっていきました」と振り返る大塚さん。
「なので、ポートフォリオワーカーといっても、やっぱり人との縁と運とタイミングだなと思っています。コミュニケーションにおいても、相手が年下だからとか肩書がどうだからなどではなく、その人のバックグラウンドを含めてすべて学びになる、と考えて、好意を持って、敬って、受け入れる姿勢を心掛けています」。
今は「コミュニケーションストラテジスト」という肩書で活動している大塚さんですが、特段難しいことではなく「言い方、出し方が違うだけで、ようは『コミュニケーションを科学する』という1つのことしかやってないですよ(笑)。コミュニケーションって、誰しも日々いついかなるときもとっているじゃないですか。それを解明しているだけで」と、いかにも明快。
あらゆる場面のコミュニケーション法や経営学、サステナビリティについての勉強会も月に一度開催しているという大塚さん。その学びに対する姿勢やバイタリティは計り知れません。
来る「マルチステージ時代」に先駆けて、すでに先進的なはたらき方と生き方を実践しているともいえる大塚さんですが、「興味があるもの、関心があるものをどんどん追い求めてきたら今に至る、というところでしょうか」と、あくまで自然体。
大塚さんが信条とする「出会い×好奇心×心の赴くまま」。これがまさにマルチステージ時代を生き抜くヒントの1つなのかもしれません。
「自分の今の立場において、自分が最も社会に貢献できることはないか、と常に思うこと。自分の未来に自分が期待してあげる、ワクワクさせてあげることをまずは自分自身がつくっていくこと」を強く提言した大塚さん
「挫折」から「魂が込められる仕事」に行き着くまで
「いきなり真っ暗な闇、大きな挫折から私のキャリアは始まっております」。
自身の経歴を投影しながらの田中さんの第一声はインパクトのあるものでした。
「元々は弁護士を目指しており、就職をせずに大学を卒業して司法試験の合格を目指して勉強だけをする司法浪人になりました。いきなり社会人としての王道を外れちゃった組なんです(笑)。3年間勉強したのですが、志及ばずに断念して、夢も目標も失い、半年くらい無気力な“人生のドン底”期間を経験しました。そこから這い上がるために何をしよう? と思ったときに、当時インターネット起業が流行っていたので『インターネットビジネスで手に職をつけよう! ここから這い上がろう!』と思い立ち、アフェリエイトというインターネット広告ビジネスを個人事業主として立ち上げました。これが最初のステップ。その後、なんとかちょっと生活できるくらいには稼げるようになりまして、次のステップとして、知人と2人で医療ベンチャーを立ち上げて、飛び込み営業を中心に新規営業をゴリゴリやっていました」。
“大きな挫折”はあったものの、そこから一念発起し、20代は「起業家」としてのキャリアを重ねた田中さん。その経験の中で「事業における組織の大事さ」を痛感したという田中さんは、「じゃあ、事業と組織ってどういう繋がりがあるんだろう?」と思い、次の行動に移ります。
「1社ではなく複数の事業と組織を見たいと思い、30代はコンサルタントとして活動していきます。最初は中小企業の組織開発コンサルを4 年、その次に大企業の組織開発コンサルを3年。そこで、日本トップクラスの組織開発メソッドを手に入れました」。
組織開発(田中さんは、組織開発を「人材開発を含む上位概念」として使用しておられます)が「自分の魂が一番込められる仕事」だと気づいた田中さんは、「この仕事をコンサルとして外部から支援するのではなく、どこかの事業会社の内部に入りこんでやりたい」と思うようになります。
「じゃあどういった業界の、どういう事業会社に入るのか? と考えていったときに、日本の最大の社会課題である『高齢化問題』の解決に寄与したいと思い、介護福祉事業を手掛ける会社に参画します」。
この時点で田中さんは、「社会課題の解決」という志を発端に、個人事業主としてアフィリエイター、創業メンバーとして新規開拓営業職、中小企業対象の組織開発コンサル、大企業対象の組織開発コンサルと、複数の事業や組織に関与して働くことで「ポートフォリオワーカー」としての資質や能力を高めていっていることが分かります。
その後、全国で220の事業所を運営する大手介護福祉士事業会社の「組織開発室長」というポジションで、「変革リーダーの採用・育成」と「介護福祉イノベーション」を実践。さらに、その実践知を用いて外部企業を支援する子会社の代表取締役としてさまざまな外部企業に関与するという二足の草鞋を履きながら、「ワーク・イン・ライフ」の体現を目指しています。
「大学生や若年未就労者の方にキャリアのつくり方、コアスキルの身に付け方を教えたり、高卒の社会人の方にどうすれば大卒の社会人に勝てるスキルが手に入るのかを教えるなどの“ボランティア的な活動”もしています」と田中さん
セルフビジョンを軸に「尖ったコアスキル」を身に着ける
田中さんが今のワークスタイルに行き着いた一番の秘訣は「セルフビジョン」を言語化したことだと言います。
生まれてから今までの自分のモチベーションの上がり下がりを「人生モチベーションチャート」に落とし込み、詳細に分析して言葉を紡ぎ出し「セルフビジョン」を言語化したという田中さん。その結果できあがった(今の)セルフビジョンが「人と組織と地域をエナジャイズして、日本を元氣にする」という言葉だそうです。
「セルフビジョンを言語化したら、次はこれを実現するためにどう名乗りたいのか、どのようなタイトル(肩書)を自らに付ければビジョンが実現するのかを考えます。私の場合は『社会課題解決に向けた組織活性化プロフェッショナル』というタイトルを落とし込みました。そしてさらにその次に、その肩書の中身をつくるためにどういったコアスキルが必要か。ワークスタイルが必要か」。この“3点セット”を展開していくことが大事だと言います。
また、ワークスタイルのこだわりの1つとして、「やる気と数字成果の両立」を田中さんは挙げます。
「元々は、エナジャイズする、元気をもたらすことだけをやっていれば幸せなはずだなと思っていて、モチベーションを上げる企画をいっぱいやったんですよ。例えば、芸能事務所と組んで介護施設に芸人さんを連れてきて『地域に笑いをつくる』みたいなことをやっていたんですけど、あるとき経営者の方から『成果ゼロです。やってることが、数字成果として証明できないからです』って言われて…。どれだけモチベーションを上げても数字成果が上がらなければ、再びモチベーションも下がって本質的な解決につながらないことが分かって、そこからやる気と数字成果、両方を上げるプロになりたい、と思うようになりました」。
田中さんの多様なはたらき方やモチベーションの源泉となっているものの1つに、確固たる「コアスキル」を有していることがあります。さらに正確には「スキルセット」とは「スキルの塊」だと言います。
田中さんの場合は、企業変革にフォーカスした「変革リーダースキルセット」をベースに使っているそうですが、コアとなるスキルセットを磨いて「自分の得意領域」を尖らせるほど「仲間が自然と集まってくる」と提言します。
「尖らせると『こいつはこういうやつだから一緒に組める』というのが相手にも明瞭になるからだと思います。そもそも私は、元々そんなに凄い人ではありません。普通の人です。ただ、コアとなるスキルセットを磨いて、自分の得意領域を尖らせれば、凄い人と対峙できる。お客さまの中で、自分よりもはるかに学歴や地位が高い人が私を『先生』って呼んでくれたりもする。そんなふうに、普通の人を凄い人にしたい。その可能性のお手伝いをしたい」と、自身の体験談を交えつつ、これからの抱負としても語る田中さん。
ライフスタイルとしては、新しい学び方として「異業種、異規模の人材開発関係者」が集まるラーニングプラットフォームに幹事の一人として参画しつつ、会社の業種や規模の壁を超えたチームを組成し「チーム学習」を実践している田中さん。今は、「ウェルビーイング」をテーマにチーム学習しているそうです。
また、「一番大事な組織である『家族』を元気にする」ことも、ライフスタイルのこだわりの大きな1つとしており、リモートワークや非同期コミュニケーションを最大限に活用し、仕事以外の時間は、家族との時間に割いているそう。しかし、これだけ多岐にわたる事業や活動をする中で、どのような時間配分で1日を過ごしているのでしょうか?
「自分の時間を奪う事柄を排除するなど工夫をして、はたらき方を変えていったら、今がこれまでで一番楽になりましたね。6時間くらいしか働いてない日もありますし。もちろん長時間働いている日もありますが。また、土日は、基本的に仕事しないようにしています。子どもの幼稚園の送迎やお風呂も毎日入れています」と、田中さんは軽やかに話しました。
そのような生き方を手に入れたのも、すべて「セルフビジョンとタイトル(肩書)とコアスキル。この3つをいかに早くつくるか」と語気を強めます。
また、「この3つの大切さを早く知っていたら『人生のドン底』まで落ちなかったのに~、と思っています(笑)」と、実体験をふまえ冗談まじりにそう話すと会場は笑いに包まれました。
「生き方を変えたことで、自己紹介の仕方が変わった。『○○株式会社の田中です』ではなく『田中です。○○と○○をやってます』という文脈に変わった」と田中さん
満席の盛況を見せた「MEET UP EVENTS」最終回。
大塚さんと田中さんのパネルディスカッション後には、参加者からの質疑応答も行われました。
その後の交流会でも各々活発なコミュニケーションが交わされ、終了時間までイベントは活気に満ちました。
本イベントでは各回ゲストと共に、これからのマルチステージ時代におけるワークスタイルとライフスタイルを紐解いてきました。
「新しいはたらき方×これからのライフスタイル」の実践者として登壇したゲストたちに共通していたのは、「軸となる領域を持っている」ことと「さまざまな境界を越えていく柔軟さ」だと感じました。
まず自分の確固たるフィールドがあり、そこを軸に各ステージを横断していく。しかし、自分が極めた分野があると、そこから抜け出せなかったり、他の意見や他のフィールドに対して壁をつくりがちになってしまいますが、その壁を無理なく飛び越える柔軟な姿勢と実行力が今回のゲスト7人には共通しているように思いました。
そのような生き方はまさに「FUTURE GATEWAY」で活動している先進生活者と共通しています。誰もが多様なはたらき方やありたいライフスタイルを選択・実現する、マルチステージモデルのヒントをお届けできたのではないでしょうか。
これからも「FUTURE GATEWAY」はミートアップイベントなどをはじめ皆さまとともに、これからのライフスタイルを考える機会を提供してまいります。
引き続き「FUTURE GATEWAY」の活動にご注目ください。
当日のプログラムなどを記載したMEET UP EVENTS特設ページはこちら
イベント概要のログとしてご覧ください(参加募集は終了しております)