



“ダジャレとデザイン”で世の中に新しいものを提案していく 「FUTURE GATEWAY」サイトデザイン担当・井上裕一
「FUTURE GATEWAY」サイトデザイン担当・井上裕一
KDDI総合研究所が2021年に立ち上げた「FUTURE GATEWAY」。KDDI research atelierがこれまで培ってきた技術を生かしながら、新しいライフスタイルを実践する人々とともに、これからのスタンダードを作っていくための共創イニシアチブです。この連載では、そんな「FUTURE GATEWAY」に関わる人々の価値観に迫り、一緒に未来を考えていきたいと思います。
今回は昨年オープンした「FUTURE GATEWAY」の特設サイトのデザインを担当したデザイナーの井上裕一さんに、仕事に対する考え方や2030年の理想のライフスタイルについて、話を聞きました。
自分の無力さを感じたからデザイナーになった

井上裕一:株式会社ダジャレとデザイン代表(https://note.com/yuichiinoue/n/n9cd3afe4549d)。平成元年生まれのデザイナー。広告制作会社を経て、株式会社カラス立ち上げに参画後、独立。主なダジャレとデザインの仕事に、ローソン「悪魔のおにぎり」パッケージ&キャラデザイン、銭湯でのクラシックコンサート「銭湯のピアニスト」、ダジャレコード「スベった東大受験生応援ポスター」「離婚した方応援ポスター」、AIクレジット「父の日ポスター」など。
- FG:
井上さんがデザインに興味を持ったきっかけを教えていただけますか?
- 井上:
デザインに興味を持ったのは高校生のときでした。友人と一緒にダンスをやっていて、イベントに出る際にチームのロゴをつくる機会があったんです。上手くつくれるだろうと思ったけど出来なくて、でもすごく面白いなと思いました。そこからデザインの道に進んだのは、当時一緒にバイトをしていた同年代と比べて「自分って無能だな」と思ったからなんです。
- FG:
無能だから?
- 井上:
そう。このまままわりと同じように勉強して学力に見合う大学に行っても、同じようには生きていけないんじゃないかと不安を感じたんです。それなら専門的なことを学んだ方が良いと思って、興味のあった美大の進学予備校に通い、大学は地元の芸術学部がある総合大学に入りました。設備が整っていて、のびのびと勉強できたと思います。その後の就活で雑誌で見つけた広告制作会社から内定をいただいて、上京しました。幅広く何でもやりたかったので、広告のお仕事を選んだんです。
- FG:
最初の会社ではどのようなことをされていたのですか?
- 井上:
代理店からの下請けで、屋外広告やキャンペーンをつくっていました。クライアントへの提案資料を作成することが多くて、いかに早く綺麗につくるかをずっと考えていました。デザイナーと言っていいのかわからないところから始まったんですよね。
- FG:
そのお仕事は長く続きましたか?
- 井上:
そこには4年いたのですが、仕事の内容に変化がなくて転職を考え始めました。そのタイミングで、エードット(現・Birdman)にいた牧野さん(現・DE Inc.代表)がカラスという会社をつくってデザイナーを募集しているのを見つけたんです。コピーライター・プランナーが代表の会社だと、デザインも自由にできるんじゃないかと思ったんです。それで縁あって僕は社員第一号としてカラスで働くことになりました。
ダジャレが得意なデザイナーはいないはず

- FG:
カラスではどんなお仕事をされていたんですか?
- 井上:
ブランディングと広告案件が半々でした。最初はデザイナーが僕一人で、大手企業やベンチャー企業を複数担当していました。ローソン・おにぎり屋のリブランディングはそのときに手掛けたものです。そこで話題になった「悪魔のおにぎり」が、僕がデザインしたもので一番知られているものかなと思います。「これ、本当に発売されるのかな?」って最初は疑っていたんですけどね(笑)。在籍中に親会社のBirdmanのIPOをしたりと、会社の成長とともに様々な経験をさせてもらって、カラスには4年くらいいました。2020年の11月に退職して、2021年の1月に「ダジャレとデザイン」という名前で法人を立ち上げました。
- FG:
「ダジャレとデザイン」って、すごく印象に残るお名前ですよね。
- 井上:
もとからダジャレが好きだったんです。開発した商品名や、デザインしたキャラクターの名前をダジャレにしたこともありました。UI / UXやロゴの作成が強みのデザイナーはたくさんいるけど、ダジャレが得意なデザイナーっていないなと思ったんです。新しいものを生み出したくて、ちょっと変わった会社名にしました。

- FG:
SNSでも、面白いことをたくさん発信されているイメージがあります。
- 井上:
カラスでSNSを上手く使っている方が多かったんです。クライアントにSNSを使ったキャンペーンを提案・実施することも多いので、提案する側もフォロワーが多い方が説得力は増しますよね。それで、どんな投稿だといいねが伸びるのか、フォロワーが増えるのかを考えながら、実験的にSNSをやるようになりました。仮説を立て、それを検証して最終的なアウトプットを生み出すのは、デザインにおいても同じですよね。
- FG:
なるほど。SNSは半分プライベートな実験という気もするのですが、仕事と創作活動において意識していることはありますか?
- 井上:
クライアントワークでは、相手の望みを汲み取って具現化することを考えています。個人で創作するときは、わかりやすいものをつくろうと思っています。言うならば、自分の母に見てもらっても面白いと思えるもの。ニッチになりすぎないことはかなり意識しています。
クールなダジャレで、スベる人を応援

- FG:
個人での創作はお仕事の間にやっているんですか?
- 井上:
そうですね。「ダジャレコード」というスベる人を応援するためのブランドをやっていて、実費で駅に広告を出したりしています。自分のお金で広告を出すデザイナーってあまりいないので、そうするとクライアントワークにも生かせる部分があるかなと思っています。たとえば、東大の合格発表の日に、「すべてはスベってから」と落ちた人への応援メッセージ広告を東大前駅に出しました。でも、コロナの影響で大学での合格発表がなくなっちゃって、受験生に見てもらえなかったんです。だから「広告自体がスベりました」ってツイートしたら、逆にとても反響がありました(笑)。失敗している人って、共感されやすいんだなと思いました。
- FG:
すごく面白いアイデアですよね。笑えるはずのダジャレにすごく励まされるような気がします。
- 井上:
他にも、これは個人的な話ですが、去年の3月に円満離婚をしたんです。離婚って「それぞれの人生を頑張ろう」というタイミングでもありますよね。日本では離婚率が3分の1くらいあるのに、良くないイメージがついていて、こんな社会のままだと生きづらいよなと思ったんです。離婚を応援する人がもっと増えてほしくて、中目黒駅に「いい夫婦の日に離婚できる夫婦はいい夫婦です。」という広告を出しました。批判の声が来るかなと思ったんですけど、ほとんどなくて、実際に親が離婚している方から「励まされた」という言葉を頂いたりもしました。もちろん、親が離婚しても子どもは幸せになるべきだし、この広告に関係する人全員が生きやすい社会になればいいですよね。そうやって自分に起こった出来事を広告にするクリエーターがいるのも、面白いかなと思っています。
- FG:
デザインやクリエイティブをいろんな形で実験的に世の中に発信していくのが井上さんらしい表現なのかもしれないですね。
- 井上:
今まで全てのアウトプットに良い反応を頂いているので、よかったなと思います。自分で企画して媒体を探して、デザインしているので、最悪失敗しても失うものは媒体費用の数万円ぐらいです(笑)。最近だと、アプリ会社の広告として、父の日に「お父さん、オレの奨学金を使い込んでくれてありがとう。」というコピーで広告を出しました。これはCDOとしてジョインしてるAIクレジットの仕事なのですが、その会社のCTOは浪費家だった父親がパソコンを買ってきてくれたおかげで、エンジニアになれたんです。その話を聞いて僕が企画を考え、CCOの長谷川哲士さんにコピーを考えていただきました。これもかなり反響がありましたね。
- FG:
面白いです。そんな中で今回はKDDIのサイト制作というお仕事をお願いさせていただきました。最後に、今回の制作において感じたことを教えていただけますか?
- 井上:
すごく良い意味で、変な感じだし、面白いなと思っていました(笑)。普通は企業のオウンドメディアって固くなりがちですけど、今回はストーリー性や企画性があったと思います。なのでオウンドメディアよりは、エンタメのコンテンツっぽいものを意識してデザインにしました。イラストも可愛いですよね。制作していてとても楽しかったです。

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